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北海道と森山大道の写真

 

東京で暮らしてずいぶんになる。
そろそろ生まれ育った旭川と、現在住んでいる東京との生活期間が同じぐらいになる。
1度も帰らない年もあるぐらい疎遠になった旭川の風景が、今だに頻繁に夢に出てくるのは不思議だ。
いつか帰ってくるだろうと望んでいる両親の思いとは逆に、私は地元に戻ることはもうないだろうと思っている。

 

それでも、昨年の大震災の後、上京組の中にも地元に帰ることを選択肢に入れた人は多いのではないだろうか。
私ですら、それが過った。

 

私は、震災後、特に原発事故の後、地元に対する思いが変化した。
このお正月の帰省時も、冬の旭川の風景は相変わらず物悲しく静かで、冷たく刺さる空気が懐かしかった。
だけれども今回の帰省は、何か少し気持ちが違ったと思う。
自分という人間を形成したこの景色が、もしかするといつか消えてなくなる日が来る可能性があると思うといたたまれなくなった。
被災地の人たちの気持ちを想像するようになった。
もし原発事故が起こって北海道が汚染されたら、みんな逃げるのだろうか。
こんなに美味しい食物をみんなが避けるようになるのだろうか。
すでにネット上では、北海道の食べ物も一部危ないと言い出している人だっている。

 

東京でネット浸けの私の心配とは裏腹に、
地元の友人や家族は然程心配していないし、そういうやりとりをしていると何が正しいのかは全くわからなくなる。
私はただ、その土地とそこに住むみんなが安全ならばそれでいいのだ。

 

今日は銀座のギャラリー巡り。
時々のぞく写真ギャラリーに立ち寄り、大好きな森山大道の「記録」というシリーズの写真集をNo.の順番に1冊ずつ見ていた。
そして、ある号の表紙の写真に目が止まり、すぐにそこがどこの風景なのかが私にはわかった。
1枚目を捲ると確信した。「記録」のNo.14は旭川の風景ばかりの写真集だった。

 

誰にとっても故郷の風景は、そういうものだと思う。

 

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