Painter 野嶋奈央子 Naoko Nojima Blog > 2011 > 2月

2月, 2011


15
2月 11

例えば階段の話

色んな日常のものがモチーフとして登場するけど、昨年のギャラリイKの個展では階段を何枚か描いた。あのときは抽象的にどこの階段ということも無いようなテキストをつけて展示したけれど、実はあの階段を描き出したきっかけになった階段は実在する。

もう亡くなってしまったけれど、東京のおばあちゃんは中目黒で飲食店をしてた。
その頃は気を遣われるのが悪い気がしちゃってあまり顔を出さなかったけど、もっと甘えてゴハン食べさせてもらいに行っておけばよかったんだけど。それでも時々は気がむくと訪れた。
そして、あの狭い階段を上ぼると、いつもおばあちゃんがいた。

おばあちゃんは大好きだったお店を辞めてから数年で亡くなってしまった。
亡くなった時にはほとんど人に知らせずにいたのに、おばあちゃんのお店のお客さんがたくさん集まって来て、色んな時代のお客さんがその時代の思い出を語ってた。おばあちゃんが大好きだったお店のことが少しだけわかった気がした。

私は、いまだに時々中目黒に行くと、おばあちゃんのお店だったところをのぞきに行く。
行くたびに看板は変わり、扉の様子も違う。それに、いつも扉がしまっていてあの階段が見えない。
そしてその扉の前で、あの階段を想像するのだ。それからその階段を上ればいつものようにエプロン姿のおばあちゃんがいるのではないかと錯覚する。
けれど、同じ場所の同じ階段なのに、その扉の向こうにある階段は「あの階段」ではないのだろうということもわかる。
そう思うと、ぶらぶらと宙ぶらりんの階段が、私の中に生まれた。

これがあの絵のモチーフになった階段の話。
けど「あの階段」は私の中だけにあるわけじゃなくて、あのお店を好きだったお客さん達の中にもぶらぶらと存在するんだろうなと、きっと私と同じく中目黒に行くたびに、あのお店の跡をのぞきに行く人がいるのだろうなと、そう思っている。


10
2月 11

雪の思想

昨夜と今朝と東京にも雪が降ったらしい。
というのも、私が外にいる時間には降っていなかったから私は見ていないから「らしい」なのだ。

東京では2月にたいてい雪が降るし、2月になるとダウンジャケット着た事を後悔するぐらい暖かい日もあったりして、本当に変な気象だと思うんだけど。

上京したての頃、雪が降らないしそんなに寒くならないもんで、冬の境目がわからなくて気持ちが悪かった。秋がだらだら続いてる感じがしたから、そもそも無意味に物悲しい秋が長く感じるなんてつらいに決まってる。
それでもすっかり、それには慣れた気もする。(猛暑と梅雨はまだまだキツイけどね。)

当時は東京で雪が降ると、東京中があたふたするからなんだかザマミロって気分になって、意外に心地よかった。でも最近は、電車が遅延したりで不都合だし、私にとってはやっぱり東京の雪は不似合いで違和感。

雪には思想があると思ってるから。雪になのか、雪国になのか、雪国の人間になのか、ともかく雪には雪の思想がつきもので、だから東京は東京らしい思想があってそれと雪とは不似合いなんだと思う。
けどこれ、私の勝手な印象と解釈。

写真は、今年の年末年始の帰省の際に撮ったもの。今年の冬は、心配になるほど雪が少なかったけどそれでも歩道はこんなに氷が固まってるんだよ。
ここは、おじいちゃんのお見舞いに行く途中の道。
今頃、この道にも、さらに雪につもっているのかな。

このページのTOPへ